プロローグ

プロローグ

 木漏れ日が眩しい森の中。時折吹き抜ける風が木々の葉と、彼女の長い髪を撫でゆく。
 さえずる小鳥達に耳を傾け微笑みながら、彼女はそこに足を踏み入れた。
 森の奥地、少しひらけた場所。中央にぽつり、と置かれた石畳の祭壇にそっと手を
伸ばす。すると祭壇はゴトリと低い音を立て、彼女の進む道を開けた。彼女を歓迎すると
ばかりに現れた階段を、一歩ずつ、慎重に降りてゆく。
 薄暗く、ひやりとした地下空間。すでに森の声は無く、彼女の足音だけが静かに響く。
 長い廊下を歩き、そして現れる巨大な空間。地下とは思えないほど明るい光に包まれた
その場所は、息をのむほどに幻想的で、彼女はその眩しさに目を細めた。
 空間を埋め尽くすほどのクリスタルはキラキラと赤く光る。そしてこれも部屋を埋めよう
と言わんばかりの翠の美しい光。
 その中で一際輝く、赤と翠、二つの巨大なクリスタル。
 彼女の瞳は、その光に引き寄せられるように二つを映し、揺れた。

 もうずいぶん前の事のような、つい最近のような。
 どこか懐かしく、優しい光に包まれ、彼女は静かに涙を流す。

 大丈夫。私なら、やっていけるから――
 触れることは出来ずただただ二つを眺め、そして祈りを捧げた。

 もう二度と、この光が失われることの無いように。 
 それは永遠の約束。永遠の、孤独。
 
 彼女は祈りを終え、二つの光に別れを告げる。

 今ではもう、世界の記憶となった彼らに、彼女は静かに微笑んだ。

  • 最終更新:2016-05-19 11:21:15

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